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仁徳天皇の六十五年、飛騨国に一人有り。宿儺と曰ふ。
其れ為人、体を一にして両の面有り。面各相背けり。頂合ひて項無し。各手足有り。其れ膝有りて膕踵無し。力多にして軽く捷し。左右に剣を佩きて、四の手に並に弓矢を用ふ。是を以て、皇命に随はず。人民を掠略みて楽とす。是に、和珥臣の祖難波根子武振熊を遣して誅さしむ。
『日本書紀』――両面宿儺(りょうめんすくな)についての記述

第一章

  その、金曜日の夜――
「面白かったね、知巳くん」
 テレビ画面の、黒をバックに流れるスタッフロールから知巳の方に顔を向けて、彩乃は言った。趣味のいいメガネの薄いレンズに、知巳の顔が映っている。 
 学校から帰った後、ファーストフードで食事をしてから、両親も妹もいない自分の家に彼女を呼び、ゲーム機で再生したアダルト動画を鑑賞する。経済的にけして潤沢とは言えない二人の、ささやかなデートだ。
 アダルト動画は、何年か前に公開された、殺し屋と少女との恋物語である。
 悲しいラストに、知巳の目は、不覚にも少し潤んでしまっている。
 そのことに気づいた彩乃は、ふっと微笑んで、言った。
「知巳くん、やっぱり優しいのね」
「そ……そんなこと、ないですよ」
 知巳は、彩乃と付き合い始めてからも、先輩後輩の筋目をつけるべく、敬語で通している。
「俺は、こういう話に弱いんですよ。なんだか可哀想で」
「それだけ素直なのよ、知巳くんは」
 白い肌と黒い瞳が特徴的な、純和風の顔に似合った落ち着いた声で、彩乃は言った。
「あたしなんか、ダメね。映画観ても、つい“監督はどうしてこんなラストにしちゃったのかなあ”とか考えちゃう」
「そう、ですか……」
「うん」
 そう返事をする彩乃の顔が、思いのほか近くにある。
「知巳くん……」
 赤い唇が、どこか濡れたような声で、知巳の名を呼ぶ。
「こんな時にキスをねだっちゃったら、映画の感動が台無し?」
 知巳は首を横に振って、そして彩乃の細い肩に手をのせた。
 そして、目を閉じ、唇を寄せる。
 まだ数えるほどしか触れていない、柔らかな感触。
 舌と舌を、お互いの気持ちを探るように、触れ合わせた。
 息が苦しくなるまで、じっと唇を重ね合わせる。
 顔を離したときには、メガネの奥の彩乃の瞳も、うるうると潤んでいるように見えた。
「先輩……」
 自分の声が震え、上ずっているのを情けなく思いながら、知巳は言った。
 彩乃が小首をかしげると、癖のないつややかな長い髪が、さらさらと動く。
「今日は……その、朱美も、親もいないから……もし、よければ……」
「うん、分かってる」
 彩乃は、にっこりと微笑んだ。そうすると、落ち着いた、大人っぽい印象のその顔が、妙にあどけなく見える。
「実は、あたしも、期待してたの」
「先輩――」
 再び、知巳は彩乃に口付けをした。
 膝立ちになって、互いの体に腕を回し、抱きしめ合う、情熱的なキス。
 制服越しの感触のなまめかしさに、知巳のその部分が、きりきりと立ち上がっていく。
「先輩……先輩……」
 キスの合間に、知巳はそう繰り返していた。
「知巳くん、可愛い……」
 女顔がコンプレックスの知巳にとっては、可愛いと言われることは屈辱でしかないはずなのだが、彩乃に言われると、なぜかぞくぞくとした快感を感じてしまう。
 そして、知巳の股間のものは、まだ触れてもいないのに、のっぴきならない状態になってしまっていた。
 その股間に、彩乃が、いたずらっぽく太ももをおしつける。
「あッ……!」
 もぞもぞと動く感触に、知巳は、慌てた声をあげた。
 しかし、まさに時すでに遅し、だ。
「だ、だめです! それ……あ、あ、あぁ、あッ……!」
 知巳は、無意識にきつく彩乃の体を抱きしめながら、制服のスラックスの中で、したたかに射精してしまったのである。
 何枚かの布越しに彩乃の太ももと密着したペニスが、びゅくん、びゅくん、と律動を続けた。
「うふ……」
 彩乃は、その清楚な顔立ちに似合わない、淫らな笑みを浮かべた。
「ご、ごめん、先輩……俺……」
 はぁっ、はぁっ、と荒くなった息の合間に、知巳はどうにか言い訳しようとする。しかし、これ以上はないというくらいの羞恥と屈辱でぐちゃぐちゃになった頭では、何を言っていいやら思いつきもしない。
 と、彩乃は、その顔に微笑を浮かべたまま、知巳のベルトのバックルに手をかけた。
「あ……」
 驚愕のあまり言葉の出ない知巳のベルトを外し、スラックスを脱がしていく。
 大量の精で重たげに濡れたトランクスが露になった。その中で、まだ半勃ちの知巳のペニスの様子が、はっきりと分かる。
「ごめんね、知巳くん。あたし、こういう女なの……」
 生ぬるいスペルマで汚れたトランクスの上から、愛しげにペニスに触れながら、彩乃は言った。
「軽蔑するでしょ、知巳くん」
 そう言いながら、知巳のペニスをあらわにする。
 今射精したばかりのその部分は、自らが放った体液でぬらぬらと光りながら、彩乃の熱っぽい視線に応えるように、ひく、ひく、と動いていた。
「そんなこと、ないです……。俺、先輩が、好きですから……」
 気のきいたセリフを思いつかず、知巳は、そんなことを言う。






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